痛くない針の話

Sports J6月15日号掲載

針を痛くなく刺すにはどうしたらいいのでしょう?痛みを感じるのは皮膚のごく表面だけなのでできるだけすばやく皮膚に挿入することで痛みを最小限に抑えることができます。昔の中国の鍼灸師たちはいかに正確にいかにすばやく針を挿入できるかを訓練し競ったといいます。たとえば水を張ったたらいにリンゴを浮かべ、水をこぼさないようにすばやくリンゴに針を刺す練習。腕を振り下ろす勢いを使って針を勢いよくしかも正確にツボに挿入する練習。実物大の銅でできた空洞の人形のツボに穴を開けておき、外側にロウを塗りかため中に水を満たし、正確なツボに針を刺したときだけ水が出てくるという実技試験。

正確さに訓練がもとめられるのは今でも変わりませんが、上記のような訓練をしなくても痛くなく針を刺すための強い味方が江戸時代に日本で発明されました。杉山和一という盲目の鍼灸師が針の修行中、なかなか上達しないため破門されてしまいました。失意のうちに江ノ島の弁天様におまいりした時、石につまづいて転んだ際脚に松葉がつき刺さりました。松葉のような柔らかいものがどうして脚の皮膚を突き通すことができたのか?その松葉は竹の筒の中から突き出ていたのです。これにヒントを得て杉山和一は、針を針よりちょっとだけ短い筒に入れ、筒に入った針を体の表面に置き、筒から少しだけ突き出している針の柄を指で軽くたたくことで痛くなく瞬時に針を皮膚に挿入する方法ー管鍼法ーを発明したのでした。現在では私を含め多くの鍼灸師がこの方法を使っています。

針灸についての講演会を礎の会(サウスベイジャパニーズコミュニティネットワーク)主催で7月21日午前10時半よりサンホゼ友愛会ビルディングにて行います。詳しくはwww.yuaikai.org/ishizueをご覧ください。

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