大病は一日にして成らず

大病は一日にして成らず Sports J10月19日号掲載

ローマは一日にして成らず”とは、偉大なことを成し遂げるには時間がかかるので日々の努力が大切であるということを言い表したことわざです。では病気はどうでしょう?”大病は一日にして成らず”ーーそうです。偉大な()病気になるにも日々の努力が必要なのです。まずはストレスをためることから始めましょう。漢方ではストレスのたまった状態やイライラした状態は気が思う方向に動かない、気が滞った状態、ととらえます。気は正常な体の中では物質を動かす、すなわち血の巡りをよくしたり、体液を正常な分布状態にしたりすることや、物質を変化させる、すなわち消化活動や新陳代謝をつかさどっています。ストレスやイライラを毎日地道にため込んでいると、気が滞り、そのため血の巡りが悪くなったり、消化や新陳代謝が低下してきます。気の滞りをそのままにしておくと血が滞るようになります。この状態を漢方では瘀血(おけつ)と呼びます。血が滞って一箇所に固まるようになると”塊”すなわち腫瘍のようなものを形成することがあります。それは現代医学で癌とよばれるものによく似ています。

このような大病を作らないためにはストレスを毎日地道にため込むような努力をしないことが重要なのはもうお分かりですね。いやなことや困ったことがあったら一人でため込まずに誰かに話してみましょう。大変な仕事があるときは終わった時のために何かあらかじめ自分にごほうびを用意しておくのもいいでしょう。気の流れをよくし滞りをなくすには鍼灸治療も効果的です。中国の鍼灸の教科書は”痛是不通、不痛是通(痛みが起こるのは気が通じていないため、痛くないのは気が通じているため)”と痛みの起こる理由を教えています。ですから体のどこかに痛みがあるときは気の滞りが瘀血まで進んでしまう前に鍼灸で治療してしまうのも一計です。また、”下工(下級の医者)は病気を治し、上工(上級の医者)は未病を治す”ともいわれます。20年先の癌をいま治すことは可能です。いつも自分自身の上工でありつづけたいものですね。

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