ヒステリー球

Sports J 8/17号掲載

日本では猛暑の中、高校野球が始まりましたね。ヒステリー球とは野球の変化球の一種ではありません。のどに何かつっかえているようで、飲み込もうとしても飲み込めず、吐き出そうとしても吐き出せない、というのどの不快感があり、検査しても異常が見つからないもののことを言います。ストレスからくる不安や緊張が原因と考えられ、緊張すると悪化します。のどに何かが詰まったような感じがするので、のどに癌でもできているのではないかと考えて不安になるとよけい悪化します。そういう方は、「気のせいですから気にしないように」といわれるとますます不安になって悪化するので、きちんと検査をして癌ではないことが示されると、安心して症状が改善します。漢方では二千年前に書かれた金要略(きんきようりゃく)という教科書にこの症状が記載されており、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という漢方薬が適用であるとされています。ヒステリー球でお悩みの方、あなた一人ではありません。二千年の昔から人類はこの症状に悩まされているのです。お医者さんにいって検査をしても何も異常が見つからなかったら、ぜひ半夏厚朴湯をお試しください。

半夏厚朴湯のほかにも不安や緊張などの精神的な症状に効く漢方はいくつかあります。いろいろな症状がすべてストレスから来ていると考えられる場合には、抑肝散(よくかんさん)や加味逍遥散(かみしょうようさん)、ささいなことに驚いていつもびくびくしてしまい、よく眠れない方には柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、赤ちゃんの夜泣きには芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)、悪夢に悩まされている方には桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、ふだんはなんともないのに旅行に出かけたり緊張すると腹痛を伴う下痢が起こる場合には痛瀉要方(つうしゃようほう)などがあげられます。お医者さんに「気のせいですから気にしないように」といわれたけれどどうしたら気にしないようにできるのかわからないとお困りの方は一度漢方や針灸をお試しになってみてはいかがでしょうか。

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