目に効く漢方

苓桂術甘湯は中医学の教科書によると胸の閉塞感、痰が出やすい、めまいなどの症状に効く方剤とされています。しかし日本漢方の基礎を築いた吉益東洞(よしますとうどう、1702-1773)とその弟子たちはこの方剤を水分代謝の異常によって起こる眼病に用いてよい結果を得ています。吉益東洞の治験録には次のような治験例があります。ある僧が目が悪いけれども見えないわけではない。ただ物を長く見ていると大小無数の四角いものや丸いものが現れ、それが消えると錐で目を刺されるような激しい痛みが起こる。この症状が3年も続いている。といって治療を求めてきた。吉益先生が診察すると上気して筋肉の痙攣がある。そこで苓桂術甘湯に川芎と大黄を加えたものを与えると数十日で治った。ということです。現代の漢方の名医の一人である藤平健先生は慢性軸性視神経炎の患者49人にこの方剤を使用し、95.5%に視力の好転が見られたと報告しています(1)

(1) 藤平健 「日本眼科学会雑誌」55巻4号

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