エビデンスベーストメディスンと漢方

目の前の患者さんに最も効果的な治療法を選ぶ際に、科学的な方法によって得られた証拠(エビデンス)を根拠に選ぶことをエビデンスベーストメディスン(EBM)といいます。日本ではEBMが漢方の分野にも取り入れられるようになって来ました。漢方の処方はもともと古くからの言い伝えにしたがって行われてきましたが、それらの言い伝えの正確さを確認することと、西洋医学の教育を受けてきた医師でも漢方薬が効果的に使えるようにすることを目的としたものです。例えば80人の片頭痛患者に呉茱茰湯という片頭痛に最もよく使われる漢方薬を服用してもらい、効いた人57人と効かなかった人23人に分類しました。効いた人たちが共通して持っていた症状や医学的所見は何だったのか、を解析したところ「他覚的足の冷え」「胃内停水」「わき腹の痛み」「へその付近の圧痛」「腹部動悸」という5つの所見がある人たちに呉茱茰湯が有効だったことがとわかりました。古くからの言い伝えにあった「吐き気」はそれほど重要でないことがわかりました(1)。このように科学的な方法を使うと、流派の壁を越えて公平にどの漢方薬がどんな人に効くのか評価することができるので、今後どんどん進めていってほしい研究のひとつであると私は思います。

(1)日東医誌 Vol.58 No.6 1099-1105 (2007)

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